破産手続の概要

破産手続は、支払不能または債務超過にある債務者の財産等を清算する手続である(破1・2条)。
現行の「破産法」は平成16年法75号において、従前の破産法(大正11年法71号、以下では「旧破産法」という)を廃止するかたちで新設された(平成17年1月1日施行)。
そして、消費者破産においては、債務者本人が破産手続開始の申立てを行う「自己破産」がほとんどを占めている。
以下、消費者破産の手続の流れを紹介する(以下は東京地裁における手続を念頭においており、他地裁においては異なる扱いもある)。
債務者から破産手続開始・免責許可(自己破産)の申立てがなされると、破産原因の有無が審査される。個人の場合には「支払不能」が破産原因となり、法人の場合には「支払不能又は債務超過」が破産原因となる(破15条1項、16条)。
破産原因が存する場合、破産手続開始決定がなされる。
このとき、破産財団をもって破産手続費用を支弁するのに不足すると認められる場合には、もはや破産手続を進めても意味がないので、開始決定と同時に破産手続を終了(同時廃止)することになる(破216条1項。ただし、免責不許可事由の調査等のため管
財事件とされる場合もある)。
これを「同時廃止型」という。
この場合、開始決定の時に免責審尋期日が定められ、債権者への意見聴取もふまえて、審尋期日後、免責の可否についての決定がなされる。
他方、債務者に資産が存する等の場合には、管財事件とされ、債権者集会の期日が定められる。
そして、管財人の活動の結果、配当すべき財団が存する場合には、債権者集会後、配当がなされ、配当手続の終了をまって破産手続の終結決定がなされる。
また、配当手続とは別個に、債権者集会までになされていた債権者への意見聴取をふまえて、債権者集会後、免責の可否についての決定がなされる。
管財事件とされたが、破産財団をもって破産手続費用を支弁するのに不足すると認められる場合(換言すれば、配当すべき財団が存しない場合)には、債権者集会と同時に破産手続を終了(異時廃止)することになる(破217条1項)。
これを「異時廃止型」という。この場合も、債権者集会までになされていた債権者への意見聴取をふまえて、債権者集会後、免責の可否についての決定がなされる。
下記の、自己破産の法律相談事例は、実戦に即していて、とても参考になる。
自己破産の法律相談

自己破産の申立て

破産手続開始・免責許可の申立て

債務者は自ら破産手続開始の申立てをすることができる(破18条1項)。
また、個人である債務者(法人の場合は免責手続の必要がない)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に免責許可の申立てをすることができる(破248条1項)。
したがって、同一書面で破産手続開始・免責許可の申立てをするのが通例である。
この点、旧破産法366条の2第1項は、「破産者」が免責申立てをなしうるとしていたので、破産宣告がなされた日から起算されると解され、破産申立てと免責申立てに日にちのずれがあって煩雑であった。
現行破産法は、破産手続開始申立てとともに免責申立てをなしうるとしたうえ、さらに、破産手続開始申立てをした場合には、同時に免責許可申立てをしたものとみなす(破248条4項)とのみなし規定も設けたので、旧法の煩雑さが解消された。

管轄

債務者が営業者(会社・商人)であるときは主たる営業所所在地等、営業者でないときは普通裁判籍の所在地(住所、居所、最後の住所=民訴4条2項)を管轄する地方裁判所が管轄する(破5条1頂)。
これには特例もあり(破5条2~9項)、たとえば、法人と代表者間、個人の連帯債務者間、個人の主債務者と保証人間、夫婦相互間では、どちらかの管轄に属する裁判所に申立てができる(破5条6・7項)。
また、破産事件の管轄は専属管轄であり(破6条)、合意管轄(民訴H条)や応訴管轄(民訴12条)は認められない(民訴13条)。
他方、管轄違背に対しては即時抗告(破33条1項)をなしうるか否か争いがあるが、再審事由(民訴338条1項)には該当しないので、破産手続開始決定がなされて確定した場合、もはや争う余地がないことになる。
東京地裁の場合、事実上、幅広く、破産手続開始の申立てを受理しており、簡便迅速な破産手続を希望する場合には、まず東京地裁に申立てすることが適切といえる。

債権者一覧表

虚偽の債権者名簿提出は免責不許可事由に該当するので(破252条1項7号)、債権者漏れがないように十分注意する必要がある。
この点、依頼者によっては、「偵務=借金」という固定観念があり、いわゆるキャッシングのみを負債と考え、ショッピングを除外する場合があるので、キャッシング以外の負債がないか具体例をあげながら確認していく必要がある。
また、親戚や知人・勤務先等からの借入れを債権者名簿に記載することに躊躇を示す場合もあり、きちんと説得しておくことが必要である。
・債務額については、申立人の立場(利息制限法を遵守する)からして、同法所定利率で計算した額を記載するのが相当といえる。ただし、支払経過が明らかでなかったり、債権者との間で計算方法に違いがあるような場合、備考欄に債権者主張額を記載しておくのが適切といえる。
・債権者名や住所などが判明しない場合は、判明している範囲で記載する。

資産目録

・詐害目的での財産の隠匿は免責不許可事由に該当するので(破252条1項1号)、記載漏れがないように十分注意する必要がある。
たとえば、過払金返還請求権などは記載漏れしがちであり、その有無ないし金額が明確でない場合も、過払いの可能性がある旨明示しておくことが必要である。
・生命保険料の支払いや給与などは通帳で入出金がなされている場合が多いので、通帳をチェックして組舶がないか確認することが必要である。
・資産の疎明については、柔軟性をもちつつ、きちんと行うことが必要である。
たとえば、保険の解約払戻金について、損害保険では払戻しがない(いわゆる掛捨て)が通例なので、必ず払戻金計算書を用意しなければいけないとは言い難いし、生命保険の場合でも、契約年数に応じた払戻金の表が保険証券(裏面)に記載されている場合がある。

陳述書

・「破産申立てに至った事情」については、わかりやすく記述しておくことが重要である。
特に債権者名簿での「借入時期」の記載と矛盾していないように確認しておく必要がある。
たとえば、「平成15年に初めて借金しました」とありながら、債権者名簿を見ると、その以前の借入れが記載されているといった場合である。
・免責不許可事由がある場合(疑いも含む)、裁量免責事由についてしっかりと記述しておくことが必要である。

家計状況

申立直前2か月分を記載するので、申立てが遅れた場合、つくり直しが必要となる。

破産手続開始決定

即日面接と破産手続開始決定

即日面接

東京地裁の場合、受付日の翌日から3日以内(休日を除く)に裁判官と面接し、その後の破産手続についての打合せをする。
ここで、裁判官より資産状況や破産原因(免責不許可事由を考慮している)などについての質疑がなされたりしたうえで、同時廃止か管財事件か、管財事件となった場合の引継予納金(20万円)の支払方法(原則一括だが、5万円の4回といった分割払いも認められる)、免責審尋期日や債権者集会期日が決められる。問題がなければ数分で終わる。
当然のことであるが、申立代理人としては、事案や提出書類をきちんと把握しておく必要がある。
なお、この即日面接を利用できるのは、弁護士が代理人となっている場合だけであり、この面接に債務者(依頼者)本人が立ち会うこともない。

破産手続開始決定

上記の即日面接の結果、同時廃止相当となった場合、当日午後5時付けで破産手続開始決定および廃止決定がなされる。
また、即日面接の時に免責審尋期日(約2か月後)が決められる。
管財事件相当となった場合、面接日の翌週水曜日午後5時付けで破産手続開始決定がなされる。
また、即日面接の時に債権者集会期日および免責審尋期日(約2か月後)が決められる。
上記のとおり、面接日の約2か月後の期日(免責審尋期日、偵権者集会)が決められるが、これには債務者(依頼者)本人が出席する必要があるので、直ちに期日を連絡しておくことが大切である。
債務者によっては期日を失念する場合もあるので、念のため、この連絡は書面でしたうえで、期日の数日前に確認の電話をしてもらうように要請しておくほうがよい。
なお、破産手続開始決定がなされると、官報公告がなされる(破32条、10条1項)。

破産手続開始決定の主な効果

個別的権利行使の禁止

破産手続開始決定がなされると、個別の権利行使が禁止され(破100条1項)、破産債権者は破産手続中に強制執行を開始することができないし、すでに開始されている強制執行は失効する(破42条1・2項)。
したがって、すでに強制執行(給与差押えなど)が開始されたうえで、破産手続開始決定がなされて管財事件となった場合には、破産法42条2項に基づき、管財人より、執行裁判所あて執行取消の上申書を提出することになる。
他方、同時廃止となった場合、すでに破産手続ではないので、上記条項の妥当するところではないが、破産法249条1・2項により、免責申立てについての裁判が確定するまでの間、強制執行をすることができず、すでにされているものは中止し、免責許可決定が確定したときは、中止されていた強制執行手続が効力を失うとされている。
これは、現行破産法において新設された規定で、旧破産法下では、破産手続下での個別執行を禁止する旧16条しかなかったため、破産手続が終了してから免責決定が確定するまでの間、強制執行を行うことができると解されていたことを改めたものである。
上記の「中止」は失効と異なり、当該手続は現状のまま凍結され、効力は免責許可決定の確定までそのまま維持されることになる。
この場合、申立代理人において、執行裁判所あて強制執行停止上申書を提出することになる。
以上とは逆に、破産者が、破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることは妨げない。

破産者の義務

管財人等への説明義務(破40条)や重要財産開示義務(破41条)がある。
これらの違反はともに免責不許可事由となる(破252条1項11号)。
管財事件の場合、債務者および代理人が一度は管財人を訪問して打合せをすることが求められており、そこで管財人より聞かれたり、要望されたことに対しきちんと対応する必要がある。
また、後者は破産開始手続申立時に資産目録を提出することになっているので、翻齢のないよう注意する必要がある。
また、裁判所の許可なく、その居住地を離れることができない(破37条1項)。
東京地裁の場合、この許可は管財人の同意を得ることによって行い、転居の場合は、申立代理人より裁判所あて届出をすることになっている。
さらに、破産者への郵便物等は管財人に転送され(破81条1項)、管財人はこれを見ることができる(破82条1項)。
現行破産法は旧法190条1項と異なり、この郵便転送嘱託を任意化しているが、東京地裁では全件転送嘱託をしている(個人の場合は第1回債権者集会まで、法人の場合は破産手続終了まで)。
転送を受けた管財人が破産者に転送郵便物等を渡すには、直接交付する場合と郵送の場合(「管財人送付」と記載したうぇで送る)とがあるが、緊急を要するような場合には、管財人からの連絡を待つだけでなく、破産者のほうから問い合わせていくほうがよい。

破産者の資格制限

破産者については復権するまでの間、職業ないし職務面で制限が設けられている場合がある。主な例をあげると、次のとおりである。
相談の実務上、警備員・保険募集員などは見かけることがある。他方、会社法制定(平成17年法86号)前は、株式会社の取締役・監査役(商254条の2第2号、280条1項)につき欠格事由とされていたが、会社法制定により欠格事由(会社331条、335条1項)から排除されたので注意されたい(ただし、就任中の取締役・監査役が破産すれば退任することとなる(会社330条、民653条2号))。

欠格事由(当該職務を行うことができない)

・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人・遺言執行者(民847条3号、852条、876条の2第2項、876条の3第2項、1009条)
・弁護士(弁護7条5号)、公認会計士(公認会計4条4号)、税理士(税理±4条3号)、司法書士(司法書±5条3号)
・商工会議所会員・役員(商工会議所15条2項2号、35条8項1号)
・警備業・警備員(警備業3条1号、14条1項)

免許・登録の拒否

・宅地建物取引業(宅建業5条1項1号)
・一般建設業(建設8条1号)につき、免許不許可事由
・特定保険募集人(生命保険募集人、損害保険代理店)につき、登録拒否事由(保険279条1項1号)

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